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江戸しぐさに学ぶマンションコミュニティのコツ

コミュニケーションの取り方は、昔から人々の間で大切なものとして捉えられていたようです。かつて100万人もの人々が暮らしていた江戸では、人付き合いの"心構え"として「江戸しぐさ」が生まれました。今回は、一般社団法人日本江戸しぐさ協会 代表理事・山内あやりさん(http://edoshigusa.jp/)に、マンションのコミュニティづくりのヒントとなる、「江戸しぐさ」 についてお話を伺いました。

江戸しぐさとは?

「江戸しぐさとは、同じ町で共に暮らす人々が、互いに心地よく生きるための心構えの一つです」と山内さん。江戸しぐさがなぜできたのか、そしてどんなものだったのかをまとめました。

「江戸しぐさ」の成り立ち

江戸時代、地方から大勢の人が集まり、さまざまな職業や立場の人が混在していた江戸の町。言葉や習慣が違うことで、町人の間で思いもよらないトラブル起きていたようです。こうしたトラブルを未然に防ごうと、商人のリーダーとなる人々が注意を払いながら、目つき・表情・モノの言い方・身のこなしなどの"しぐさ"を身につけ、みずからが手本となっていました。このしぐさが口伝えで広まったのが「江戸しぐさ」と言われるものです。

態度で示すことが大事

江戸しぐさに伝わる心構えには、「気遣い」「感謝」「尊重」などがあり、これらの心構えを態度で示すことが大切だとされてきました。相手を不快にさせないための思いやりや、時にはトラブルに対する防御策として、江戸しぐさは多様な人々が互いに暮らしやすくするための知恵となって継承されました。

江戸しぐさを知ることは、現代で心地よく暮らすためのヒントになることもありそうです。次は、数多く存在する江戸しぐさの中から、実際にマンションの暮らしに役立つものを紹介します。

江戸しぐさがもたらす、暮らしの知恵とは?

江戸と同じように、マンションにもさまざまな人が集まって住んでいます。ここでは、お互いが心地よく暮らすためのヒントとなる江戸しぐさを3つご紹介します。

①ちょっとした声かけが安心感を生む…「声がけしぐさ」

江戸で社交場の一つとなっていた銭湯。そこでは知らない者同士でも「ごめんなさい」など、声をかけてから湯船に入ることが慣習となっていました。一言であっても声がけをすることで安心できて、無用なトラブルを防いでくれると考えられていたようです。

「知らない人にちょっとした声かけをしたことで、その場の雰囲気が和らいだ」という経験はありませんか。例えばマンション内で、
・人とすれ違うときやエレベーターに乗り合わせたとき、会釈と共に「こんにちは」とあいさつする。
・誰かの前を横切るとき、「失礼します」「通りますね」といった言葉を発する。
など、一声かけてみるとどうでしょう。相手への心遣いが伝える「声かけ」を積み重ねることで、信頼関係を築くことにもつながります。

②知らないふりも優しさのひとつ…「聞き耳しぐさ」

江戸時代の長屋の仕切りは襖一枚でした。自然と耳に入ってしまうご近所の会話も、「聞かなかった」ことにして、言いふらすなど決してしないという気遣いを大切にしていました。こうした「聞き耳は立てない」という、江戸の人々のプライバシーを尊重する態度を表しているのが「聞き耳しぐさ」です。

このことは、マンション内で耳にしたことや目にしたことを口外しない、というマナーにも通じます。無関心とは違う、相手を思いやってこその「聞き耳は立てない」という選択。共用廊下やエントランスなどで交わす話題に配慮するなど、住民同士で心地よい距離感を保とうと努めることが大切ですね。

③お互い様の気持ちで、相手を責めずに、こちらからも歩み寄る…「うかつ謝り」

多くの人々が往来する江戸の路地では、すれ違いざまにぶつかったり足を踏まれたりは日常茶飯事だったようです。踏んでしまった方が謝るのは当然ですが、踏まれた方も「こちらこそうっかりしていました」と、踏まれる場所に足を出したうかつさを謝る習慣がありました。そうすることで、雰囲気を和やかにするしぐさのことを言います。

「こちらもすみません」という歩み寄りの心によって、ちょっとした失敗や行き違いがこじれてトラブルになってしまった、ということを防げるのではないでしょうか。

いかがでしたか。小さな心遣いをあえて態度で表す江戸しぐさから、マンションでの円滑なコミュニケーションに生かせることもありそうですね。

「講」で共に助け合い、楽しむ暮らし

江戸には、相互扶助(互いに助け合う)を目的とした「講」という仕組みがありました。住みやすい町を維持するために知恵を出し合う場で、「江戸しぐさ」もこの「講」の活動の中でも受け継がれたようです。講の種類は多岐にわたり、経済的な相互扶助の役割を持つ「無尽講」のほか、女性同士の円滑なつき合いや、宗教の信仰など、目的もさまざまでした。ここでは、現代のマンションライフにも通じる「講」と、その機能がどのように発展したかをご紹介します。

◇地震など災害などで共に備え、助け合う「なます講」

災害が多発していた江戸時代。地震や火事が起きたときに助け合いができるようにとつくられたのが「なます講」で、ルールや役割を決めて災害に備えていました。また、日頃から有事のための知恵を出し合う場として、近隣住民を知る機会にもなっていました。

◇共に楽しみ交流を図る「富士講」

富士山を愛で信仰する「富士講」や「伊勢講」などは、現在の趣味のサークルに近い存在です。登山の準備や道中を一緒に楽しむ者同士の集まりとなり、日常の相談を話す場に発展することもありました。

◇講の中で生まれたお世話役「おひがかり」

講が盛んになると、「おひがかり」という受付係・幹事・事務局にあたる世話役が生まれました。裏方のようでいて物事が円滑に進む大事な役割とされ、「おひがかりを自ら買って出よ」と言われていました。

人をまとめ、地域の関係性をよりよくする役割を果たしていた「講」は、今の時代のマンション理事会や防災活動、イベントやサークル活動などに通じるものがあります。暮らしを楽しみながら、いざというときに円滑な助け合いができるコミュニティづくりは、江戸時代から受け継がれた知恵だということがわかりますね。

身近な他人と心地よく暮らす

江戸しぐさの大きなテーマは「外つ国付き合い(とつくにつきあい) 」にありました。「外つ国」とは江戸の外にある地方のことで、出身地・言葉・生活習慣が異なる人や、親しくない間柄の人と心地よくお付き合いができて、思いやりのある社会にすることを目指していたことがわかります。

江戸しぐさは、単なる所作やしぐさではなく、「共に生きる」ことを大切にする思いを「行動」で表すこと。大勢が暮らす江戸の町に生きた人々が生み出した知恵の数々は、現代のマンションコミュニティにも生かせることがたくさんあります。多様な人が暮らすマンションでは、住民同士がちょっとした気遣いを習慣にすることで、みんなの暮らしをより快適なものにしていきたいですね。