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「いつもの味で心と体を癒す」 ~減災ガールズに学ぶ、備蓄・非常食のススメ~

非日常だからこそ大事にしたいのは「日常の感覚」──ステイホーム期間でそう再確認された方も多いのではないでしょうか? 今回は、普段から使う食品を、防災備蓄食品としても利用する方法などを広くシェアする活動をしている「溝の口減災ガールズ」の山本詩野さんへ、非常時に心と体の健康を保つ「食」の知恵をお伺いします。

【取材先】
溝の口減災ガールズ

2016年、溝の口近隣マンション在住の女性たちで立ち上げた「溝の口減災ガールズ」。東日本大震災の被災地である石巻や益城町との交流を機に得た学びを多くの方と共有できるよう、減災に関するさまざまなワークショップを展開している。
https://www.gensai-lab.com/溝の口減災ガールズ/

災害時にこそ、「いつものごはん」で元気になろう

「おいしい!」と感じること──それが、被災時に笑顔を取り戻す何よりの方法なんだそう。溝の口減災ガールズの山本詩野さんに、避難時にも「日常」を感じられる食事を維持することの大切さとそのコツを伺いました。

熊本県益城町で被災者から聞こえてきた「支援物資のおにぎりやパンなどが続くなかで、きんぴらなど普段の食卓に出るおかずの差し入れにホッとした」という声。山本さんはそれを聞き、「防災食」の意味を考えたと言います。

山本さんの考える、防災食のポイントとは?

■自分にとっておいしいと思える食品であること。
■期限切れで処分しがちな従来の防災用食品ではなく、保存のきく食材を日々使いながら買い足していく。
■カセットコンロさえあれば料理ができることを覚えておく。

「心身ともに疲労がたまる中で、自分にとっておいしいと感じられる食事は大切ですし、ほっとすると笑顔が出ます。大事なのは、被災を『自分事』として考えて、やり方や食材を選択することです」(山本さん)

ローリングストックにオススメな食品とは?

ローリングストックというと、レトルト食品やカップ麺を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、本来は日常使いの食材として使える「保存期間が長めの食材」のこと。
米、パスタ、ツナ缶、サバ缶、コーン、豆缶、ひじきの水煮、切り干し大根、トマトの水煮缶、乾燥わかめ、味噌など、一般家庭によくある食材もローリングストック用の食材になります。じゃがいも、たまねぎ、にんじん、キャベツ、りんごといった保存のきく野菜や果物も常備しておきたい食材だそうです。

その他、ローリングストック向きの食材・調味料をご紹介いただきました。

■アレンジの幅が広い食材

ホットケーキミックス、白玉粉、塩昆布、とろろこぶ

■かさましで満足度アップできる食材

クイック春雨、高野豆腐

■調味料

めんつゆ、白だしつゆ、ポン酢、食べるラー油、チューブ梅肉、チューブしょうが、レモン汁、粒マスタード、カレーパウダー、ハーブソルト、すりごま、あごだし

■リラックスできる甘味

はちみつ、ココアパウダー、シナモンシュガー(シナモンパウダーでもよい)

「調味料はいろいろ用意しておくと、+αの味付けを楽しめるので便利。添加物が多いと喉が渇きやすいので、できるだけ添加物の少ないものを選びましょう」 (山本さん)

被災時は、植物性のたんぱく質も活躍します。常温保存が可能な無調整豆乳も、貴重なたんぱく源になります。日持ちはしないものの、豆腐や油揚げも栄養があり、いろいろな料理に使えます。「常に食材を使いながら、在庫を回転させる」という意味で、実はローリングストック向きの食材なのだそうです。

普段から食べて慣れている食材でローリングストックを実践すれば、フードロスを減らせますし、災害時にいつもと同じ味が食べられることは安心につながりますね。

ライフラインが止まったらどうする!?

地震や水害などの災害に遭ったとき、心配なのは食料の備蓄だけではありません。調理はもちろん、清潔な環境を維持するためにも不可欠な、ガスや水道といったライフラインの途絶がおこることも。特に、コロナウイルスの脅威が目の前にある今、避難生活における衛生管理はとても大きな課題です。

衛生管理の基本はとにかくアルコール消毒。手指の消毒にはジェルタイプが一般的ですが、スプレータイプを用意しておくと、外から持ち込んだ荷物や広範囲のふき取りなどにも便利です。家族がよく触るドアノブや取っ手、スイッチなどは、除菌シートでこまめにふき取りを行うとよいそうです。

「食材や道具類などは常に何がどこにあるか、すぐに把握できるように整理しておくと、清潔を保ちやすく、ストックの保存期間もチェックしやすいですよ」 (山本さん)

またマンションでは保管スペースに限界があります。調味料や缶詰について、真空パックパウチタイプを選ぶと、鮮度の維持がしやすい上に、瓶やボトル、缶のように場所を取ることがなく、保管時も廃棄時も「かさばらない」というアドバイスも。

清潔を保つためには、調理と食事の後片づけの管理も重要です。ポイントは、使うアイテムの数は少なく、使い捨てできるものを用意すること。被災時は水が不足しがちなので、洗い物を減らす工夫が大切なのですね。

用意しておきたい器具

・カセットコンロ(ガスが止まっても火が使える)
・はさみ(包丁がわりに使えば、まな板・包丁が不要に)
・高密度ポリエチレン袋(ポリ袋クッキング、材料を混ぜたり味付けをするときに使用)
・クッキングシート(フライパンを汚さずに調理できる、蒸すときにも便利)
・ゴムベラ(料理の汚れを取るのに使用。食器・器具の洗浄に使う水が節約できる)

被災時の調理には、ポリ袋クッキング(写真下)がオススメだそうです。食材をポリ袋に入れてそのままゆで、真空調理をするという料理方法で、汚れものが出ず、複数の料理を一度に作れます。ただ、調理する際は、完全に火を通すよう十分ご注意ください。

ポリ袋クッキングの様子

「食品衛生法基準63℃30分もしくは、それに相当する温度&時間加熱するようにしましょう。さらにo-157対策(75℃1分)、ノロウイルス対策(85-90℃90秒)をクリアすると安心ですね」 (山本さん)

また、煮物やおひたしなど日持ちのする惣菜を作って調理の回数を減らすと、洗いものも減らせます。酢や梅など酸を使って味付けしたり、そもそもの水分量を減らすと日持ちしやすくなるそう。

「ステイホーム」もローリングストックで乗り越えよう

今回の緊急事態宣言下では、食料供給に問題はなかったものの、小麦粉やパスタなど一部の食料が店頭から消えるといった現象がありました。 都内でも感染者が高止まりし、コロナウィルス第二波に対する警戒が叫ばれる現在。特効薬やワクチンのない状況では、「3密」を避け、不要不急の外出を避けて人との接触を減らすことが最も効果的な感染防止対策であることには変わりありません。
ステイホームではライフラインは止まりませんが、自宅避難生活との共通点も少なくありません。保存や調理の環境に支障がない中で、どのようにステイホームを乗り切ったらよいか、伺いました。

まず、「買い溜め」をせずにステイホームを乗り切るためのコツは、1回の買い物で何日分・何回の食事を作るかをイメージして献立の計画を立てておくことそうです。

そして、限られた食材で豊かな食卓を演出するには、「調理方法・味付け」がポイント。同じ食材でも切り方を変えたり、煮る・焼く・蒸すと調理方法を変えるだけで、さまざまな料理に展開できます。この機会に調理法のバリエーションとして、「ポリ袋クッキング」に挑戦してみてもいいですね。食材を高密度ポリエチレン袋に入れてゆでるだけなので、小さいお子さんと一緒でも楽しく調理することができます。

【オススメ ポリ袋クッキング】
豚ひき肉のサルシッチャ風

材料
・豚ひき肉:200ℊ
・パセリ・バジル:みじん切り各大さじ1
 (乾燥なら小さじ1/2)
・白ワイン(料理酒でもOK):大さじ1
・セロリ:みじん切り大さじ2
・塩:小さじ1
・こしょう:少々

作り方
① 高密度ポリエチレン袋に材料をすべて入れてよく揉みこむ。
② 袋のまま、ソーセージの形をつくり、空気を抜き口をしっかり縛る。
③ 大きめの鍋で沸かした湯に①を入れて、弱火で20~25分ゆでてできあがり。


「ステイホームはライフラインが止まっていないので、調理が普通にできるのがありがたいですよね。高密度ポリエチレン袋に入れて調理するサルシッチャ風(イタリア語で腸詰のこと)はいかがでしょう。災害時の練習にもなりますよ」 (山本さん)

手持ちの調味料で『これとこれをあわせるとこの味付けになる!』というのが分かっていると、味付けのバリエーションもつけやすく、少ない食材でも違った味わいを演出できます。市販のたれ、ドレッシング、ソースなどをそろえておくのもいいでしょう。

今回は、非常時にも「いつもの食卓」を感じることで心の健康を保つ「ローリングストック」の知恵をお届けしました。コロナ禍での生活にも役立つこの知恵を活用すれば、「買い溜め」「買い占め」などの迷惑行為に走ることなく、非常時にあっても心身ともに生活していけそうですね。