トップ > コムズ倶楽部 > マンション基礎知識 > 無理をしない防災備蓄で、いざという時の「心構え」を作る
マンション基礎知識
無理をしない防災備蓄で、いざという時の「心構え」を作る

地震の発生率が世界的に高く、気象変化の影響も受けやすい日本。毎年、台風や高潮、土砂災害などによる自然災害のニュースがいくつも報じられています。被災時に備えて生活必需品を備蓄している人も多いと思いますが、マンションではスペースも限られており、収納に苦労しているという方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、自分と家族にとって確実に必要なアイテムを効率よく収納しながら保管・管理するコツについて、防災の専門家である危機管理アドバイザー 国崎信江さんにお伺いしました。

【取材先】
危機管理アドバイザー 国崎信江さん

横浜市生まれ。株式会社危機管理教育研究所代表。
女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。
内閣府「防災スペシャリスト養成企画検討会」委員、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。
著書、関連図書に『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『プロが試した! 防災グッズ厳選カタログ』(マキノ出版)など。

備蓄を始めるときに気を付けたい3つのこと

防災意識の高まりなどに伴い、自宅避難や外出自粛に備えて備蓄を始めたという方も多いのではないでしょうか。しかし、長期保存が可能なものを選んだために、保存期限を忘れてしまい、いつの間にか消費期限が切れて破棄することになってしまったり、消費期限に追い立てられるように、食べたくない保存食を食べることになったりしたという話を耳にします。こうした、「備蓄初心者」によくある「失敗」と対策について、専門家に伺いました。

・食料の備蓄は「食べたいもの」を選ぶ
「備蓄用の食品を買うなら、『食べてみたい』というワクワク感を優先しましょう。普段の生活でも食べたくなってしまうようなものなら、消費期限ぎりぎりまで残って困ることはありません」(国崎信江さん)
非常食は、日常食品と異なり種類が限られているものです。いざというときに食べるものがないことを懸念して、「これだったら食べられるかな?」と消極的に購入してしまうと、賞味期限にイヤイヤ食べることになります。そこで、備蓄用の食品を買いそろえるときは、「使わなかった場合の消費方法」を優先して、「食べたいもの」から選ぶことをおすすめします。

・消費期限や耐用年数は「長期」より「そろえる」を意識
防災用の備蓄品を買うときに、消費期限や耐用年数の長いものを選んでいる方も多いのではないでしょうか。実は、備蓄の際は「より保存期間の長いものを選ぶ」よりも「より多くのアイテムの消費期限・耐用年数をそろえる」のが重要なのだとか。
「食品も飲料も、それぞれ耐用年数が異なるものを備蓄すると、管理が難しくなります。そこでおすすめなのが、買ったときに『保存期限をそろえておく』こと。備蓄用のアイテムは3・5・7・10・12年など様々な期限がありますが、なるべく買い替えのタイミングをそろえておくと、1つだけ期限が過ぎて使えない、という状況を防げます」(国崎さん)

・実は使用期限があるアイテムに要注意!
「食べ物の消費期限は気にしていても、薬などは期限を意識しない傾向があるようです。絆創膏などの医薬品にも使用期限があります。普段から市販薬を使用する前に外箱の期限を見るようにするなど、意識をしておくといいでしょう」(国崎さん)
被災時には欠かせない衛生用品や医薬品にも使用期限があります。冬季の被災生活に欠かせない使い捨てカイロは、何年も経過したものは持続時間や温度に影響が出ることも。一方で、飲食物でも氷砂糖などの消費期限がないものもあるそう。普段から消費期限の有無や長さは意識しておきたいですね。

おうちDEキャンプで「我が家に必要な備蓄」を見極めよう

インターネット上にはたくさんの備蓄に関する知見があふれていますが、それぞれの家庭によって「備蓄すべきアイテム・数」は違いがあって当然です。国崎さんによると、おうち時間を楽しみながら災害に備える方法があるのだとか。

・「おうちDEキャンプ」で自宅避難をシュミレーション
「マンションでは災害時に自宅避難となることが多いと思います。その疑似体験として、ライフラインを止めて過ごす『おうちDEキャンプ』がおすすめです」

国崎さんのすすめる「おうちDEキャンプ」とは、電気のブレーカーをあえて落としたり、ガスや水道などを一時的に止めたりして、可能な範囲で自宅のライフラインを止めて3時間以上過ごしてみること。まずは数時間でも、体験してみることが重要だそう。

・本当に必要な備蓄品は?
マンションで自宅避難ができても、電気が止まった際は日常と同じ生活ができなくなります。ハンズフリーで過ごすためには懐中電灯よりもヘッドライトの方が便利で、さらにランタンがあれば照明代わりになるので快適に過ごせる、なども体験するとよく理解できるそうです。また、電気が止まっても情報収集のためにスマートフォンの充電は必須であったり、ホットプレートで食事を作ったりするため、蓄電池の重要性を実感すると言います。

「『雨だから室内にテントを張って遊びながら過ごそうか』など、レジャー気分で気軽に取り組んでいます。おかげで、突然ライフラインが止まっても、子どもたちは慌てることなく冷静にヘッドライトを装着し、自ら飲食料を準備するなど、自律的に動いてくれるようになりました」(国崎さん)

ライフラインを止めて過ごすと、災害用トイレで用を足すことの(心理的・肉体的)ハードルの高さや、ついつい普段通りに水を使おうとして断水に不便を感じるなど、被災時に体感するであろう日常とのギャップやトラブルを事前に経験できます。これにより、自分にとって被災時に必要なアイテムを絞り込むことができ、どれだけ不便な生活であるかを知ることで実際の被災生活を送る際の「心構え」ができると言います。

「ハッピーストック」で保管も楽しく

この数年、日常食品の中でも保存のきくアイテムを普段使いしながら備蓄する「ローリングストック」という方法が話題です。中でも国崎さんがすすめているのが「ハッピーストック」という新しい備蓄のスタイルです。

・自分も家族もハッピーになるものを準備しよう
「箱買いすると自分や家族が『うれしい!』と思うようなアイテムをストックするのが『ハッピーストック』。ペットボトル飲料など、気に入ったものが安いときにまとめ買いしておくと、回転もいいので賞味期限を気にする必要がなく、保存していてもハッピーな気持ちでいられます」(国崎さん)

まとめ買いするものは毎回同じでなくてもOK。備蓄というととにかく水を買い込みがちですが、国崎さんは、トマトジュースや豆乳、ジンジャーエールなど、家族がハッピーになるさまざまな飲料を積極的に「大人買い」するそうです。

・常識に縛られない、備蓄品収納のコツ
このほかにも、国崎さん流の備蓄のポイントは「常識に縛られないこと」にあると言います。

「食料だからとキッチンに置かないといけないというのは固定観念。ベッドの下や学習机の足元など、人目に付かないデッドスペースを活用するのが上手な備蓄保管のポイントです。その際、保管場所ごとに買い替えのタイミングをまとめておくと、消費期限や耐用年数の管理も兼ねられますよ」(国崎さん)

また、スペースに限りのあるマンションだからこそ気にしてほしいのが「家具選び」。ベッド下収納や収納付きユニット畳など、最初から収納機能がある家具を選んで収納スペースを増やしましょう。また、収納場所ごとに「食品」「衛生用品」など、テーマを決めておくと、必要なものを必要な時に取り出しやすくなります。

防災にも役立つ!スマホ活用術

「防災アプリ」を使用すると、備蓄の準備から管理、そして被災時のサポートまで様々な機能を利用できます。普段から家族で活用しておけば意識の共有もでき、いざというときには、家族との連絡も図れ、強い味方になってくれそうですね。

総合防災アプリ「PREP」

https://www.rcsc.co.jp/prep-company
防災用品や避難場所を登録し、災害備えるだけでなく、災害の情報をリアルタイムに得たり、災害発生時の行動をガイドしたりしてくれる機能も。


救命・健康サポートアプリ「MySOS」

https://www.allm.net/mysos/
事前に登録してある家族や、MySOSをインストールしている近隣の人にSOS発信ができるアプリ。
災害時以外にも高齢者の見守りなどにも活用できる。


東京都公式の防災アプリ「東京都防災アプリ」

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1005744/index.html
食品や室内の備えなどがチェックできるチェックリストで生活スタイルにピッタリな備蓄品・防災用品を絞り込める。防災に関する一般的な情報が網羅されており、東京都民でなくても役に立つアプリ。


「スマホには緊急連絡先の設定やSOSボタン、ライトなど、そもそも防災に役立つ機能がたくさん搭載されています。さらに、防災関連のアプリをまとめた『防災フォルダ』を作っておくと、いざというときに安心です」(国崎さん)

今回は災害に備えた備蓄のヒントをお届けしました。災害は急にやってきて、私たちの日常生活を阻むことがあります。コロナ禍で体験しているように、今までできた日常生活を送れないことは、私たちにとって大きなストレスになることでしょう。普段から、災害時を意識して準備しておくことで、少しでも心と体の健康を保てるようにしていきたいですね。