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2022.09.29

マンションにおける在宅避難の「いろは」最新版

マンションにおける在宅避難の「いろは」最新版

地震大国において、いざというときの災害対策は非常に重要です。特に都市部で大災害となった場合、重要なライフラインである電気・ガス・水道が長期間止まったらどうしたらいいのでしょうか。
耐震性が高いと言われている昨今のマンションにおいて、備えるべきこととは何でしょうか。
在宅避難が長期間になっても対応できる備えについて、マンション防災士の釜石徹さんにお伺いしました。

【取材先】
マンション防災士:釜石 徹さん

分譲マンション特有の防災対策の研究を長年続けており、マンション防災対策の新常識や長期在宅避難のノウハウをマンションでのセミナーや自治体講演会で伝えている。1枚のマニュアル「マンション防災スマートシート」は、マンション防災アイデアコンテストと内閣府主催のジャパン・レジリエンス・アワードで優秀賞を受賞。著書に「マンション防災の新常識」(合同フォレストより2020年11月発行)がある。

マンションでの「被災生活」、その長所と短所

戸建てよりも建物自体は災害に強いと言われるマンション。しかし、建物の被害がなかった場合でも、ライフラインが止まることを前提に、被災生活に向けての備えが必要となります。まずは、マンションでの「被災生活のポイント」をマンション防災士の釜石徹さんへ伺いました。

避難所を上手に活用しながら「在宅避難」が最適解

「災害時はまず避難所へ」と考えている方も多いかもしれませんが、「避難所の収容人数は、避難所のキャパシティが限られているため地域の人口の5%程度。旧耐震基準の戸建て、アパート、マンションの住居者が家屋倒壊などで住む家を失った人たちが優先されるべき」と釜石さん。新耐震基準マンションの住民であれば、在宅避難以外に選択肢はないと考えて備えるべきだそうです。

「発災直後~数日の避難所は体制も情報も整っておらず、混乱しがち。ライフラインが止まっている状況は避難所も自宅も同じです。電気・ガス・水道がない中での暮らし方には戸惑うかもしれませんが、暮らし慣れた自宅の方が、安心して過ごせるのではないでしょうか?」(釜石さん)

とはいえ、避難所は行政と市民とのやりとりの窓口として機能する場所。全く頼らずに被災生活を乗り切ることはできません。一方で、発災直後は大混乱が予想されるため、お住まいのマンションが倒壊していないのであれば、近づかない方がいいでしょう。ある程度状況が見えて、避難所の体制が整ってくるのが発災数日後。それ以降、情報の取得や支援物資の受け取りなどといった目的で活用するものと考えましょう。

"新しいマンション防災"の在り方とは

慣れない場所で周囲に気を遣いながら過ごす避難所とは異なり、住み慣れた自宅で家族と過ごせる在宅避難。しかし、マンションで普段の生活と同じような避難生活を送るには事前の準備が重要です。特に戸建てと異なるのは、マンション全体の備えを考えなければいけない点です。ここでは、マンションならではの防災対策について教えていただきました。

事前対策を重視する"新しいマンション防災"を

「"旧来のマンション防災"は新型コロナの三密対策を考慮すると、見直しをしなければなりません」と語る釜石さん。これまでの"マンション防災" では、発災後の対策(災害対策本部を立てての住民の状況把握やけが人の救護・搬送など)が重視されてきましたが、釜石さんは「むしろ発災後の対策より事前対策の方が大事」と指摘し、発災後の災害対策本部の運営よりも、平時における"防災委員会"の活動に重きを置くことを推奨しています。

近年の自然災害事例からもわかるように、大災害の場合、地域全体で死傷者が多数発生し、救急車や病院に頼ることが難しい状況になり、応急手当をしたあとは自宅で安静にするしか選択肢がありません。しかし、多くのマンションの防災対策では、災害対策本部の設置を想定し、災害後の動きをシミュレーションして防災対策としています。しかし、それよりも「そもそも死傷者を出さない対策」が重要だというわけです。
例えば、平時に家具の転倒防止やガラス飛散防止シート貼付の普及を心掛けるだけで、発災時の怪我・死亡のリスクは目に見えて低くなります。また、火事についても各戸でエアゾール式簡易消火具を備えて使用方法を理解していれば、燃え広がる前に自力で消火することも可能です。

また、東日本大震災以降、共同備蓄を講じているマンションも多いですが、各戸で備える方が現実的との指摘も。なぜなら、実際にマンション住民全員が数日間過ごせる備蓄を保管するスペース確保が難しい上、消費期限による定期的な買い替えコストが管理組合の負担になっていくからです。それよりも、各戸に備蓄の方法(ローリングストック)やお薦めの備蓄品情報、被災時の食生活を豊かにするノウハウ等を提供し、実際の備えはマンション住民一人ひとりに備えてもらう方が無理が出ません。

このように、"新しいマンション防災"では、発災時に慌てたり混乱したりすることのないよう、「防災委員会が自助を推進するサポート」に重点を置いています。各自に備えを任せきりにするのではなく、自助推進のための防災セミナーや防災用品の使用実演会や災害発生のガイドラインの作成など、いざというときの備えを各自にしてもらうための具体的なノウハウを提供していくという考え方です。

「気軽に答えられるレベルの簡単なアンケートの実施をするのも効果的です。一年に一度、アンケート結果や自由回答で得られた意見や疑問などを共有するだけでも、マンション住民それぞれに災害を自分ごととしてとらえ、防災意識を高めてもらう仕掛けになります」(釜石さん)

簡単なアンケートで当事者意識を持つきっかけに。(釜石氏提供資料)

マンション生活における「災害への備え」を考えよう

では、自助の備えとしてどのようなことをすればいいのでしょうか。防災グッズや対策情報が多く優先順位がわからなくなりがちですが、これだけあれば安心できる必須対策を伺いました。

各戸で備えたい、「防災対策」のポイントとは?

「自助とは、災害時に慌てなくても済むための備えのこと。防災委員会が中心となって、全戸で備えることを目標に取り組んでいただきたい」と語る釜石さん。お伺いした災害に向けての事前対策や必要なアイテムをご紹介します。

【発災時の被害を減らす事前対策リスト】

・自宅で死傷者を出さないための備え

家具の転倒防止、ガラス飛散防止対策など、けがの原因を取り除く。

・発災時の火災を防止する備え

火事になる前に自力で消火できるような備えをしておく。

・停電対策

夜間に発災した時など、停電しても灯りがとれる設備を備える。

・10日間以上の在宅避難への備え

食事・水・トイレなど、被災時の状況を想定して備蓄や用具の準備などをする。

事前対策で注目したいのが、火災への備えと、在宅避難を10日間以上と設定した点。マンションでは廊下などの共用部分に消火器を備えていますが、消火器を使わなければならないほど火が燃え上がる前に、自宅に備えてあるスプレー式の消火具で消火してしまうのが二次災害を防ぐコツだそうです。また、首都圏が大地震に見舞われた場合、1週間以上の停電が起きる可能性もあるため、10日間以上の備えをしておくことが必要なんだそうです。

さらに、事前対策のために、釜石さんがおすすめする「備えておきたい必需品」リストを教えていただきました。

【避難生活に向けて備えておきたい"防災必需品"リスト】

① エアゾール式簡易消火具

初期消火をするための室内消火器。火元にスプレーするだけでいいので、扱いが簡単。

② 停電時自動点灯ライト

停電しても自宅内での移動に支障をきたさないため、常にコンセントに差し込んでおく。通常は点灯しないで、停電時にだけ点灯する。コンセントから外して懐中電灯として使うこともできる。

③ モバイルバッテリー

大規模な地震が発生して広域停電となった場合でも、携帯電話の中継局が止まる発災24時間後まではショートメールの利用が可能。そのため、携帯電話を一回分フルチャージできる程度のモバイルバッテリーがあればよい。

④ 湯煎できるポリ袋調理用の袋

家庭内の特定の人しか食事が作れないという状況をなくすため。湯煎用のポリ袋があれば、誰でも簡単に煮物、鍋物、蒸し物などの調理ができる。

⑤ 完全防臭素材のポリ袋

排水管が使えない場合、自宅内に一定期間汚物を貯める必要があるため、完全防臭できるポリ袋が必須。

⑥ 携帯浄水器

水道が止まっていても、お風呂の残り湯を浄水して活用することができる。

⑦ カセットコンロ

在宅避難生活の調理にはかかせない。所有していない人が意外にいるので、全戸で所有するよう働きかけることが必要。

※その他、用意しておくべきもの

乾電池、各種ペーパー類、ラップなど

カセットコンロがあれば、湯煎用ポリ袋(100円均一ショップで購入可能)で炊飯も可能。(釜石氏提供写真)

ちなみに防災用品として多くの家庭にあると思われる「非常用持ち出し袋」は、在宅避難を前提とした備えをする場合には必要ありません。ただし、被災時に使用するものはわかりやすいように、箱や引出しなどにまとめて収納しておくと、いざというときに家族の誰もが取り出しやすく、ストレスなく避難生活に入れます。

平時に自宅避難のシミュレーションを

「10日以上の在宅避難」というと、即座に状況をイメージしがたいという方もいらっしゃるかもしれません。そんな場合は、平時に被災生活のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか?

在宅避難は「自宅キャンプ」と考えよう

「ライフラインが止まった状態でも自宅で10日以上避難生活をする」というと、とんでもなく高いハードルに感じられるかもしれません。そこで「自宅でキャンプをする」としたらどういうものが必要か、どういった生活になるかと考えてみましょう。
野外にテントを張って10日間と考えるよりは、しっかりしたマンションの躯体に守られ、家具などもある状況ですので、だいぶハードルも下がってくるのではないでしょうか? なお、「自宅キャンプ」をお試しされる場合は、ある程度気候が穏やかでエアコンなどがない季節を選んでくださいね。

自宅療養・自宅隔離の経験からもシミュレーション

急な自宅療養を余儀なくされた場合など、普段から在宅避難を視野に入れて備えていると、心に余裕をもって自宅療養生活をすることができます。逆に自宅隔離生活を経験した方の中には、急に自宅だけで過ごしたことで、被災生活のイメージを持つことができたという方もいます。自宅療養や自宅隔離の際に不便に感じたことを、災害時の自宅避難の準備につなげていく視点も有効と言えそうです。

今回はマンションにおける被災生活への備えに関するヒントをお届けしました。平時に被災生活をあえて試してみると、より在宅避難の状況が具体的にイメージできるようになります。まずは、一度体験してみるのが一番の備えになりそうです。

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